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連載:渋谷シネマ部通信 (記事数 / 24)

「シネマヴェーラ渋谷」で20代の佐分利信に会ってきた!

いまや日本全国で本当に少なくなってしまった名画座。

 

 
東京にもたくさんあった名画座たち、「大井武蔵野館」、「新宿昭和館」…惜しまれつつ無くなっていった数々の「小屋」を、その文化を21世紀に復活させよう、その熱い心意気と見事な企画力で映画ファンに快哉の声をあげさせる渋谷の誇りと言うべき映画館、それが「シネマヴェーラ渋谷」なのです!

 

 
場所は道玄坂を上って円山町に入ったところにある滅茶苦茶おしゃれな建物「KINOHAUS」内。

 

 
「KINOHAUS」

 

 写真

 

かっこいい~

 

 
この「KINOHAUS」は「ユーロスペース」に「オーディトリウム渋谷」さらに「映画美学校」も入った複合的な映画専門ビル。その4Fにあるのがわれらが「シネマヴェーラ渋谷」。
館内も見事におしゃれで椅子もフカフカ。女性も若い方も安心して入れる名画座です。名画座ってなんだか怖そうな外観で最初はビビってしまい入りづらかったりするものです(慣れてしまうと平気なんですけどね)。その点「シネマヴェーラ渋谷」はご心配なく!

 

 

05 劇場ロビー

  

美しい!

 

 

ここでは4週間に渡る邦画中心の特集が組まれ、新旧沢山の名画を一日2本立て(基本入れ替えなし! 一般1400円!)で上映しているのですが、さて只今絶賛開催中の特集はと言いますと…

 

 

「日本のオジサマⅡ 佐分利信の世界」

 

写真

 

http://www.cinemavera.com/programs.php

 

 

出た~!! し、渋すぎる~!!(ちなみに「日本のオジサマⅠ」は山村聰でした)おしゃれな「KINOHAUS」で佐分利信特集! このカオスっぷりがまた渋谷らしいところでもあります。

 

 
今回のラインナップは26作品。俳優のみならず、後には監督としても活躍した佐分利信、その監督作品も多く含まれております。どれを見に行こうか迷う…できれば全部見たい~。

 

 

迷った末に行ってみたのはどちらも1937年作品の「婚約三羽烏」「男の償ひ(前後編)」の2本立て!
1950年代あたりの脂ののった演技も見たいし、もっと後の「首領」とか「巨魁」と言った感じの強烈な存在感も味わいたいけれど、滅多にスクリーンで見られない若き日の佐分利信に会いたい! その思い出駆けつけました。

 

 
まずは名匠島津保次郎監督の「婚約三羽烏」。

 

 
傑作恋愛コメディでした!
当時松竹が売り出した若手俳優3人組「松竹三羽烏」。ちょっとのんびりした人の良さそうな佐野周二、良いとこの出で洒落者の上原謙、そして常に偉そうでズーズーしい佐分利信。それぞれが若々しい魅力で銀座のデパートを舞台に恋の鞘当てを繰り広げます。佐野、上原、両二枚目の間でコミカルかつスパイシーな二枚目半を演ずる佐分利さん、美味しい役どころです!

かわいらしい三宅邦子、気ままな社長令嬢の高峰三枝子、世話焼きのおばさん飯田蝶子に、セリフ回しの見事さにうっとり聞きほれてしまう社長夫人の葛城文子と女優陣も最高!

 

 
島津監督の長回しと細かなカットを巧みに使い分ける語り口のテンポの良さは、これぞ神業! およそ1時間の中編、あっという間に見終えました。いやはや贅沢なひと時とはこれのことです。

 

 
つづいて野村浩将監督「男の償ひ」。

 

 
前後編で150分以上の大長編で強烈なメロドラマ。主演は松竹の大看板田中絹代、そのお相手が佐分利さん。と、来れば思い出すのは小津安二郎監督の傑作「彼岸花」。絶妙な距離感で熟年夫婦を演じた二人、こんな若いころから共演していたのですね~。

 

 
なんて呑気な連想は吹き飛ばされてしまう悲劇の嵐。コクトーの戯曲に「地獄の機械」と言うのがありましたが、まさしくそれ。メカニカルなまでの非情さで不幸がドカドカと降り注ぐ、メロドラマと言うよりホラーの域に突入しかけていると言っても過言ではない凄まじさ。しかも大長編だが登場人物は少な目に絞られ、濃密な人間関係が出口の見えない迷路の中で延々とあがき続ける物語展開には見ていて「た、助けてくれ~」と叫びたくなるほどの恐るべき映画でした!

 

 
田中絹代はさすがの可憐な演技。戦後の大女優としての演技こそ天下一品と絶賛される一方、若きアイドル女優田中絹代の魅力、原節子や高峰秀子ほどに語られることが無いような気がしますが私は絹代さん大好きです。立ったり座ったりちょっとした仕草の美しさ、切れ長の目をウルウルっとさせて相手に訴えかけるいじらしさ、ああなんて素晴らしいのでしょう!
他方、佐分利さんはけして悪人ではないのですが極めてエゴイスティックな男を演じて後年の「巨魁」っぷりが想起されます。「婚約三羽烏」ではとても楽しい演技を披露してくれた飯田蝶子や河村黎吉もここでは実に陰影が濃くギャップにめまいのする思い。

 

 
しまった…この2本立て、見る順番を間違えた…。
しかし、こんなデザートの後にステーキを食べるような体験をするのも名画座の醍醐味。いかに強い映画的胃袋を持っているか試された瞬間と言えましょう!!

 

 
さてさて、この「日本のオジサマⅡ 佐分利信の世界」は10月31日まで開催中。

 

木暮実千代の愛らしくも元気の良いバスの車掌さんを佐分利信の怖そうで実は優しい運転手がサポートする清水宏監督の素晴らしすぎる人情ロードムービー「暁の合唱」(またしても飯田蝶子登場!)。

 

その木暮さんと佐分利さんが大人のラブロマンスをたっぷり見せてくれる1952年作品「離婚」(監督マキノ雅弘! マキノの傑作は任侠映画だけじゃないです! 田崎潤や田中春男らマキノ一家も出てます!)。

 

佐分利監督作品では原作者堀田善衛をはじめ武田泰淳(!)片山哲(!)が顔を出す野心的政治サスペンス「広場の孤独」。

 

小津映画からは1941年の「戸田家の兄妹」がエントリーと言うのも見事な選択!「東京物語」を見ていて誰もが口にしたくなる一言を、この映画では佐分利さんがビシっと啖呵を切って決めてくれます。佐分利さんも小津さんも熱いな~。

 

 などなど他にも名作傑作目白押しです!

 

 
さあ「シネマヴェーラ渋谷」へ急げ!!

 

 

 

ライター / 伊藤 圭吾

【担当フロア】7F 「HOME」
【担当ジャンル】クラシック
【出身地】静岡県
【血液型】AB型
佐分利さんと言えば、やっぱり小津作品での中村伸郎、北竜二との「オジサマ三羽烏」も忘れがたいものがありますね!

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