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連載:渋谷シネマ部通信 (記事数 / 24)

河瀬直美監督映画『あん』を観て

 

 

 

 

 

 

 

 

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この映画は、公開前から絶対に観に行こうと決めていました。地元のよく行く映画館で、頻繁に予告が流れているのを目にしていたからです。

目を引く激しいアクションがあるわけでもなく、失礼ながら今旬の若手俳優が出ているわけでもなく、泣ける!を全面に押し出すでもなく…。けれど、予告を見た瞬間、この映画は絶対に観に行かなくてはならない!と、思わせる何かがありました。

 

 

結果、大正解。

私は普段、前情報をほとんど入れずに観るスタイルなのですが、予告から得た情報といえば、中年男性がどら焼き屋をやっていて、ある日ものすごく美味しいあんを作る年配の女性が登場する。ということだけ。そして、浅田美代子の台詞「その人、らいじゃないかって」の”らい”意味も、恥ずかしながら分からず、この映画独自の設定か何か?位の感じで考えていました。

 

 

いざ映画をみたら、号泣。

らいとは癩病、つまりハンセン病を通して描かれた映画でした。映画を観て初めてハンセン病について知り、劇中で描かれる癩病患者に対する国の措置に驚きました。本当にこの日本で取られていた措置なのか。また、それにより国民の偏見を不必要に増長させた事実はあまりにも衝撃的でした。

癩病と知りながらも、そういった事を抜きにして、一人の人間として接するも、何も出来ない自分を腹立たしく思う男、癩病に対して偏見を抱く女、病気に関して全く無知な少女。強いていうなら法律も今は撤廃したはずなのに、未だ偏見が取れない人間に全く非がないわけではないけれど、だれが悪いわけでもない。壮絶な人生を歩まされがらもその感情をぶつける場所もない社会、法律が悪いとしかいえない。この、人権問題に取り組んできた(と思っていた)日本に、根拠もないまま法律だけが1996年まで残っていた事に衝撃です。

 

劇中、樹木希林演じる徳江さんは激しく怒りをあらわにするでもなく、感情的になるわけでもなく、全てに絶望するでもなく、(確か手紙で)「こちらに非はないつもりでも、世間の無理解に押しつぶされてしまうことがあります」と、観る人の胸に熱く語りかけてきます。徳江さんは、少しの間だけでも外に出て、働く事が出来て幸せだったのではないかと思います。

 

劇中は象徴的な美しい桜に目を奪われ、ラストの秦基博による『水彩の月』の歌が素晴らしすぎて涙が止まりませんでした。こういう映画こそ、海外の人々に観てもらいたい日本の映画であり、私たち日本人も観るべき映画なのだと思います。

 

 

 

 

『あん』

監督・脚本:河瀬直美

出演:樹木希林

   永瀬正敏

   内田伽羅

   市原悦子

主題歌:秦基博『水彩の月』

 

 

映画『あん』公式HP

 

 

 

 

 

 

 

ライター / 岩渕 由梨

【担当フロア】4F 『AMUSMENT』
【担当ジャンル】映像
【得意ジャンル】邦画/国内ドラマ
【血液型】B
【出身地】神奈川
基本的に、国内ドラマの初回放送はほぼ全チェックしているドラマ好き!休みの日にお菓子食べながら一気に見ています。今期のお気に入りは『天皇の料理番』『ドS刑事』

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